退職金の手取りはいくら?計算シミュレーション
税金の計算方法と早見表【2026年版】
退職金の税金は、給与よりずっと軽い。勤続年数に応じた非課税枠(退職所得控除)があり、枠の範囲内なら税金ゼロ・額面がそのまま手取りになります。勤続20年・退職金1,000万円でも、引かれるのは約15万円です。
退職金から引かれるのは「所得税+住民税」だけ
毎月の給料からは所得税・住民税に加えて健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料が引かれますが、退職金に社会保険料はかかりません。引かれるのは所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の2つだけです。
さらに退職金は「退職所得」という区分で、給与や他の収入とは合算されずに分離課税で計算されます。長年の働きに対する一時金という性格から、税制上かなり優遇されているのです。
退職所得控除——勤続年数で決まる非課税枠
優遇の中心が退職所得控除です。勤続年数に応じて、次の金額までは課税されません。
| 勤続年数 | 退職所得控除(非課税枠) |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
たとえば勤続10年なら400万円、20年なら800万円、30年なら1,500万円、38年なら2,060万円。退職金がこの枠に収まっていれば税金は1円もかかりません。勤続年数の1年未満の端数は切り上げでカウントします(勤続10年3ヶ月→11年)。
なお障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、この控除額にさらに100万円が加算されます(国税庁 No.1420)。傷病で辞めざるを得なかった方は、勤続年数だけで判断せず必ず確認してください。
手取り計算の3ステップと計算例
控除枠を超えた場合も、計算はシンプルな3ステップです。
- 退職金 − 退職所得控除 を出す
- それを半分にする(1/2課税)——これが課税退職所得
- 課税退職所得に所得税(累進5〜45%+復興特別所得税2.1%)と住民税(10%)をかける
控除を引いた残りの「さらに半分」にしか課税されないのがポイントです。
非課税枠:40万円 × 20年 = 800万円
課税退職所得:(1,000万 − 800万) × 1/2 = 100万円
所得税:100万 × 5% × 1.021 = 51,050円
住民税:100万 × 10% = 100,000円
税金合計 約15.1万円 → 手取り約985万円(手取り率98.5%)
非課税枠:800万 + 70万 × 10年 = 1,500万円
課税退職所得:(2,000万 − 1,500万) × 1/2 = 250万円
所得税:(250万 × 10% − 97,500円) × 1.021 = 155,702円
住民税:250万 × 10% = 250,000円
税金合計 約40.6万円 → 手取り約1,959万円(手取り率98.0%)
※所得税は速算表(課税所得195万円以下5%、330万円以下10%−97,500円…)で計算しています。
勤続年数×退職金額の手取り早見表
勤続年数(5年刻み)と退職金の額面(500万円刻み)から、手取りと税金を引ける表です。単位はどちらも万円。左から2列目は、その勤続年数の退職所得控除(非課税枠)です。
手取りの早見表(単位:万円)
| 勤続年数 | 控除額 | 退職金(額面) | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2,000万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | ||
| 5年(※) | 200 | 477.3 | 845.9 | 1,154.4 | 1,435.9 | 1,692.4 | 1,938.2 |
| 10年 | 400 | 492.4 | 949.3 | 1,376.3 | 1,797.1 | 2,198.0 | 2,588.8 |
| 15年 | 600 | 500.0 | 969.5 | 1,406.8 | 1,830.6 | 2,241.7 | 2,632.5 |
| 20年 | 800 | 500.0 | 984.9 | 1,437.2 | 1,861.1 | 2,280.3 | 2,676.2 |
| 25年 | 1,150 | 500.0 | 1,000.0 | 1,473.6 | 1,914.4 | 2,338.3 | 2,752.7 |
| 30年 | 1,500 | 500.0 | 1,000.0 | 1,500.0 | 1,959.4 | 2,391.5 | 2,813.8 |
| 35年 | 1,850 | 500.0 | 1,000.0 | 1,500.0 | 1,988.7 | 2,444.3 | 2,868.7 |
| 40年 | 2,200 | 500.0 | 1,000.0 | 1,500.0 | 2,000.0 | 2,477.3 | 2,922.0 |
税金(所得税+住民税)の早見表(単位:万円)
| 勤続年数 | 控除額 | 退職金(額面) | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 500万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2,000万円 | 2,500万円 | 3,000万円 | ||
| 5年(※) | 200 | 22.7 | 154.1 | 345.6 | 564.1 | 807.6 | 1,061.8 |
| 10年 | 400 | 7.6 | 50.7 | 123.7 | 202.9 | 302.0 | 411.2 |
| 15年 | 600 | 0 | 30.5 | 93.2 | 169.4 | 258.3 | 367.5 |
| 20年 | 800 | 0 | 15.1 | 62.8 | 138.9 | 219.7 | 323.8 |
| 25年 | 1,150 | 0 | 0 | 26.4 | 85.6 | 161.7 | 247.3 |
| 30年 | 1,500 | 0 | 0 | 0 | 40.6 | 108.5 | 186.2 |
| 35年 | 1,850 | 0 | 0 | 0 | 11.3 | 55.7 | 131.3 |
| 40年 | 2,200 | 0 | 0 | 0 | 0 | 22.7 | 78.0 |
表の前提:会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出済み/役員等(会社役員・議員・公務員)で勤続5年以下の場合を除く/同じ年や前年以前に他の退職金・iDeCo等の一時金を受け取っていない/障害退職の加算なし。所得税は復興特別所得税(2.1%)を含み1円未満切り捨て、住民税は10%(市町村民税6%・道府県民税4%をそれぞれ100円未満切り捨て)。万円未満は小数第1位に四捨五入しています。
(※)勤続5年の行は「短期退職手当等」の計算です。勤続5年以下の従業員は、控除を引いた残りのうち300万円を超える部分に1/2課税が適用されません(くわしくは勤続5年以下の人は特例に注意)。
出典:国税庁タックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収・別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表・No.1420 退職金を受け取ったとき(いずれも令和8年4月1日現在法令等)、総務省「退職所得に対する住民税の特別徴収について」。確認日 2026年9月19日。
表の右上ほど(勤続が短く、金額が大きいほど)税金が増えます。勤続30年以上なら、退職金3,000万円でも手取りは額面の93%以上。一方、勤続10年で3,000万円だと約86%まで下がります。勤続年数が1年違うだけで控除が40万〜70万円変わるので、表の間にある方はツールで確かめてください。
表にない組み合わせ(勤続23年・1,800万円など)も、ツールなら勤続1年刻み・金額50万円刻みで出せます。計算式はこの表と同じです。
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退職金1,000万円・2,000万円・3,000万円の手取り
金額を決めて知りたい方向けに、勤続20年・30年・38年(大卒で定年まで勤めた場合の目安)の3ケースを1円単位で出しました。前提は上の早見表と同じです。
退職金1,000万円の手取りはいくら?
退職金1,000万円の場合、勤続20年なら税金約15.1万円で手取り約984.9万円、勤続30年・38年なら退職所得控除の範囲内なので税金0円、1,000万円がそのまま手取りです(「退職所得の受給に関する申告書」を提出した一般の従業員の概算)。
| 勤続年数 | 控除額 | 課税退職所得 | 所得税(復興税込み) | 住民税 | 税金合計 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 800万円 | 100万円 | 51,050円 | 100,000円 | 151,050円 | 9,848,950円 |
| 30年 | 1,500万円 | 0万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 10,000,000円 |
| 38年 | 2,060万円 | 0万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 10,000,000円 |
退職金2,000万円の手取りはいくら?
退職金2,000万円の場合、勤続20年なら税金約138.9万円で手取り約1,861.1万円、勤続30年なら税金約40.6万円で手取り約1,959.4万円、勤続38年なら退職所得控除の範囲内なので税金0円、2,000万円がそのまま手取りです(「退職所得の受給に関する申告書」を提出した一般の従業員の概算)。
| 勤続年数 | 控除額 | 課税退職所得 | 所得税(復興税込み) | 住民税 | 税金合計 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 800万円 | 600万円 | 788,722円 | 600,000円 | 1,388,722円 | 18,611,278円 |
| 30年 | 1,500万円 | 250万円 | 155,702円 | 250,000円 | 405,702円 | 19,594,298円 |
| 38年 | 2,060万円 | 0万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 20,000,000円 |
退職金3,000万円の手取りはいくら?
退職金3,000万円の場合、勤続20年なら税金約323.8万円で手取り約2,676.2万円、勤続30年なら税金約186.2万円で手取り約2,813.8万円、勤続38年なら税金約99.3万円で手取り約2,900.7万円です(「退職所得の受給に関する申告書」を提出した一般の従業員の概算)。
| 勤続年数 | 控除額 | 課税退職所得 | 所得税(復興税込み) | 住民税 | 税金合計 | 手取り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 800万円 | 1,100万円 | 2,137,974円 | 1,100,000円 | 3,237,974円 | 26,762,026円 |
| 30年 | 1,500万円 | 750万円 | 1,111,869円 | 750,000円 | 1,861,869円 | 28,138,131円 |
| 38年 | 2,060万円 | 470万円 | 523,262円 | 470,000円 | 993,262円 | 29,006,738円 |
同じ3,000万円でも、勤続20年と38年では税金が200万円以上違います。差を生んでいるのは税率ではなく、勤続年数で決まる控除額です。
「申告書」を出し忘れると2割引かれる
ここまでの優遇を受けるための唯一の手続きが、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することです。通常は退職手続きの書類一式に含まれていて、書いて出すだけ。提出していれば会社が正しい税額で源泉徴収してくれるので、原則確定申告も不要です。
出し忘れると、控除が適用されずに一律20.42%が源泉徴収されます。勤続20年・1,000万円なら本来約15万円のところ約204万円が引かれる計算です。この場合も確定申告をすれば払い過ぎた分は戻ってくるので、慌てずに申告しましょう。
勤続5年以下の人は特例に注意
短い勤続で退職金を受け取る場合、「1/2課税」が制限される特例があります。
- 役員等で勤続5年以下:1/2課税が適用されません(特定役員退職手当等)
- 一般の従業員で勤続5年以下:控除を引いた残りが300万円を超える部分には1/2課税が適用されません(短期退職手当等)
iDeCo・企業型DCと重なると控除が減ることがある
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCを一時金で受け取ると、それも退職所得として扱われます。問題は、会社の退職金と受け取る時期が近いときです。勤続期間が重なっている分だけ、退職所得控除が削られます。
ここは「何年空けるか」だけでなく受け取る順番によって必要な間隔が違うのが要注意で、逆に覚えている解説も見かけます。国税庁の規定は次のとおりです。
| ケース | 調整の対象になる期間 | 実質的に空けたい年数 |
|---|---|---|
| 前に受けたのが通常の退職金 | 前年以前4年内 | 5年 |
| iDeCo・DCの一時金 → 会社の退職金の順 | 前年以前9年内 | 10年 |
| 会社の退職金 → iDeCo・DCの一時金の順 | 前年以前19年内 | 20年 |
つまり先にiDeCoを受け取る場合は10年、先に退職金を受け取る場合は20年が目安です。定年退職とiDeCoの受給開始が近い方は、順番を決める前に一度確認しておくと差が大きく出ます。
※出典:国税庁「同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」(No.2735)。制度改正で年数が変わることがあるため、実際の受け取り前に最新の規定と、税理士・金融機関への確認をおすすめします。
自己都合と会社都合で変わるもの・変わらないもの
「自己都合だと退職金が減る」と聞いて不安になる方が多いところですが、変わるのは額面、変わらないのは税金の計算です。ここを分けて考えると見通しが立ちます。
| 項目 | 自己都合と会社都合で | 理由 |
|---|---|---|
| 退職金の額面 | 変わることが多い | 会社の退職金規程で支給率が分かれているため。自己都合は低く設定されているのが一般的 |
| 退職所得控除 | 変わらない | 控除額は勤続年数だけで決まる(障害退職の加算を除く) |
| 税率・1/2課税 | 変わらない | 退職理由による区別がない |
| 失業手当の給付制限 | 変わる | 自己都合には給付制限期間がある |
自分の支給率は就業規則か退職金規程に書かれています。人事・総務に「退職金規程を見せてください」と頼めば確認できます。額面さえ分かれば、あとはこの記事の早見表かツールで手取りが出ます。
民間・公務員・役員で「決まり方」が違う
税金の計算はここまで説明したとおり全員共通ですが、そもそも退職金がいくらになるかの決まり方は立場によって別物です。金額が分からないときは、次のどこを見ればよいかで探し方が変わります。
| 立場 | 金額が決まる根拠 | 確認先 |
|---|---|---|
| 民間企業の従業員 | 会社の就業規則・退職金規程 | 人事・総務 |
| 国家公務員 | 国家公務員退職手当法 | 所属の人事担当 |
| 地方公務員 | 各自治体の退職手当条例 | 自治体の人事担当 |
| 会社役員 | 役員退職慰労金規程・株主総会の決議 | 会社の規程 |
中小企業では、会社が中退共(中小企業退職金共済)に加入していて、退職金がそこから直接支払われることもあります。その場合は会社ではなく中退共から振り込まれるので、金額の確認先も変わります。
※役員で勤続5年以下の場合は、前の「勤続5年以下の人は特例に注意」で触れた1/2課税の制限にも該当します。
退職金の「次」も数字で確認しておく
退職金の手取りが見えたら、次に気になるのは「辞めたあと、毎月いくらで何ヶ月もつか」。失業手当の金額と開始時期も先に把握しておくと、資金計画がぐっと立てやすくなります。
よくある質問
退職金に社会保険料はかかる?
かかりません。健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料の対象外です。引かれるのは所得税(復興特別所得税含む)と住民税だけです。
確定申告は必要?
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば原則不要です。未提出だった場合や、医療費控除などで他の還付を受ける場合は確定申告をします。
住民税はいつ引かれる?
支給時に天引き(特別徴収)されます。給与の住民税と違い、翌年にまとめて請求されることはありません。なお退職後は「給与分」の住民税の支払い方が変わる(普通徴収への切替等)ので、そちらは別途注意が必要です。